La Vie 行政書士事務所

コラム|みなし労働時間制は 労働者に不利?有利?

日本の労働法には「事業場外みなし労働時間制」という制度があります。

営業や出張など、事業場の外で仕事をしていて、使用者が実際の労働時間を算定することが難しい場合に、一定の時間を労働したものと「みなす」制度です。

では、事業場の外で働いていれば、いつでも適用できるのでしょうか。

そうではありません。

例えば、

・事業場外で働いていても、メンバーの中に労働時間を管理する人がいる場合
・携帯電話などによって、随時、使用者の指示を受けながら働いている場合
・事前に訪問先や帰社時刻などについて具体的な指示を受け、その指示どおりに業務を行って事業場へ戻る場合

など、労働時間を算定することが可能な場合には、事業場外みなし労働時間制は適用されません。

一定の要件を満たす場合には、在宅勤務でも適用されることがあります。

では、実際に何時間働いたものとみなすのでしょうか。

【原則:所定労働時間を働いたものとみなす】

例えば、会社の所定労働時間が1日7時間だったとします。

事業場外で仕事をし、その労働時間を算定することが難しい場合には、原則として「7時間働いた」とみなします。

実際に何時間働いたかを計算するのではなく、所定労働時間働いたものとして取り扱うのが「みなし」です。

【例外:その業務には通常7時間を超える時間が必要な場合】

ここが少し難しいところです。

例えば、その事業場外業務を行うためには、通常8時間必要だったとします。

この場合、所定労働時間の7時間ではなく、

「通常必要とされる8時間」

を労働したものとみなします。

この「通常必要とされる時間」は、労使協定によって定めることもできます。

では、

事業場内で2時間働いた後、事業場外で通常8時間を必要とする業務を行い、そのまま直帰した場合

はどうなるのでしょうか。

事業場内で働いた2時間は「みなし」の対象ではありません。

したがって、

事業場内の実労働2時間

事業場外のみなし労働8時間
=10時間

その日の労働時間は10時間として扱われます。

【では、残業はどうなる?】

ここで、

「所定労働時間は7時間なのに、10時間になった。超えた3時間はどうなるの?」

という疑問が出てきます。

労働基準法上の法定労働時間は、原則として1日8時間です。

したがって、

所定労働時間:7時間
労働時間:10時間
法定労働時間:8時間

であれば、

7時間→8時間の1時間は「法定内残業」、

8時間→10時間の2時間は「法定時間外労働」

という整理になります。

事業場外みなし労働時間制は、

「残業代を支払わなくてもよい制度」ではありません。

あくまでも、労働時間の算定が難しい場合に「何時間働いたものとして取り扱うか」を定める制度です。

その結果として法定労働時間を超えれば、時間外労働としての取扱いが必要になります。

では、この制度は労働者に有利なのでしょうか、不利なのでしょうか。

実際に働いた時間ではなく「みなし時間」で労働時間を算定する以上、実労働時間との関係によって結果は変わります。

だからこそ重要なのは、

そもそも本当に「労働時間を算定し難い」働き方だったのか。

事業場の外で働いていたというだけで、当然にみなし労働時間制が適用されるわけではありません。

この点が争われた裁判例として、「協同組合グローブ事件」があります。

次回、この判例について考えてみたいと思います。

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